康浩郎のシネマ黙示録 / #1「大大阪から大阪へ」 / 阿呆船〜さかしまの巡礼
    阿呆船〜さかしまの巡礼
    阿呆船〜さかしまの巡礼(1984年)43分53秒
    【時代背景】東京からやってきた人々が観てブッ飛ぶほどに驚くという関西の眠れる獅子、闇の無冠の帝王・松本雄吉率いる劇団「日本維新派」’83年12月公演「月光のシャドーボール」のセミドキュメンタリフィルムが新人映像作家康浩郎監督によって完成された。彼らの公演は、毎回厳寒、暴風、大雨に彩られ、とてつもなくドラマチックな大阪の大事件。
    彼らのドキュメンタリフィルムは、今をときめくあの井筒和幸監督によって’78年に「足の裏から冥王まで」で映画化されているが、今回は、前回にまして幻想美、彼らの魅力を十二分に映像化することに成功している。
    1980年4月発行『映画新聞』より

    【初演時の評】作品では維新派のパワーを見事に吸収、破壊、構築しています。特に維新派を切り裂いた破壊力はすさまじく、「月光のシャドーボール」から「阿呆船」への大きな原動力となり、康さんの資質…冒険主義的破壊性は15年間、持続していたようです。その破壊力に相乗してたのが福島洋氏の研ぎ澄まされたカメラによって映画ならではのさかしまな世界も覗けました。
    眩く虚飾な都心=現世と、コンテナヤード内の「阿呆船」=彼岸との対峙構造です。復活した監督の活躍を期待します。
    谷 潔(映像作家)